仏アニメーション映画『アメリと雨の物語』感想

映画『アメリと雨の物語』の色彩豊かな世界観をイメージした、光と影が美しい風景。日本とフランスの感性が融合したアニメーション作品のレビュー用画像 映画・ドラマ

Coucou ! ほたです。

「アメリと雨の物語(AMÉLIE ET LA MÉTAPHYSIQUE DES TUBES)」を観てきました。

映画『アメリと雨の物語』公式サイト
3.20(金・祝)全国ロードショー | 監督:マイリス・ヴァラード、 リアン=チョー・ハン | 原作:「チューブな形而上学」(アメリ―・ノートン著) | 声の出演(日本語吹替版):永尾柚乃、花澤香菜、早見沙織、森川智之 | 音楽:福原まり ...

(フランス語学習ブログなので、フランス語版の予告で)

予告を見た時から絶対に行きたい映画だったので、半日休暇を取って行くほど期待していました。その期待を大幅に超え、ぽろぽろ泣くほど心を動かされたし、私の今年上半期はこれがナンバーワンで決まりだと思います!

とにかく画面の美しさや、表現されていることの尊さに泣きました。

今日は「もう映画を観たよ」という方も、「まだこれから!」の方も、観る予定はないけどフランス語学習者の方も(原作者のアメリー・ノートンの小説はフランス語)読める内容で、感想を綴っていきます。

 

 

映画の概要

作家のアメリー・ノートンの自伝的小説「チューブな形而上学」を原作とした、フランスのアニメーション作品。監督はマイリス・ヴァラード、リアン=チョー・ハンの2人。

ストーリーの舞台は1960年代の日本。外交官の父を持つ、神戸生まれのベルギー人の少女アメリの成長物語です。

 

原作者について

アメリー・ノートン(Amélie Nothomb)は1966年生まれのベルギー人。もう60歳になりますが、毎年新作を出版しており、フランスの友人も「彼女に会ったことあるよ!」というほど、各地でサイン会などもよくする活発な方のようです。

Wikipedia には現代フランス語圏最有力の作家の一人と書かれています。

 

映画の感想(ビジュアル面)

観終わってなぜか心に「ありがとう!」がすごく浮かんでいました。フランス映画でありながら、私が言葉にしてこなかった、または「四季が美しい」みたいにぼんやりとしか言えなかった、日本を好きな理由をすべて表現してくれたと思いました。

「ああ日本が好きだなあ、愛しいなあ」と思うすべてが、言葉ではなく、その豊かな色彩で表現されています。

ジブリ映画の温かさや懐かしさと、印象派絵画のような繊細さがありました。

実際、パンフレットに何度もジブリの高畑勲監督や宮崎駿監督の名前が出てきていました。監督お二人もかなり影響を受けたようです。それもまた、日仏の繋がりを感じて嬉しいですね。

鮮やかな光と影、瞬間の光や色彩の変化を描いたその美しい色彩表現は、かなり特徴的です。ずっと観ていたいし、なんとも心が安らぐ世界でした。夏の明るい夜、春の暖かい風が吹く庭、雪の積もる静かな朝、天気や空気や季節の移り変わりを、すばらしく光の変化で表現しているのです。

確かに細かいところを考えると「外国の人が描いた架空の日本」ではあるのですが、私には日本人が描くよりも、日本だった気さえします。風景だけではなく、昔の日本の家、たとえば台所にある洗剤のパッケージひとつ取っても、細部の表現に愛を感じました。

 

映画の感想(ストーリー面)

実は最初は少し入り込めず、そこまで好きじゃないかもしれないという印象でした。

「自分は神だ」という子供時代からスタートし、感情移入もできなければ、あんまり可愛くないなという…(すみません!笑)

アメリー・ノートンの代表作「畏れ慄いて」を過去に読んだ時も、大袈裟な誇張表現が個人的には若干好きになれない部分があり、それが彼女の作風というか特徴なのかもしれません。

大丈夫かなあ…という印象で始まった映画ですが、物語が進むにつれ、そんな無機質で少し傲慢に思えるアメリが、自分を取り囲む人、自然、モノ、あらゆる事象に興味を持ち、誰よりも心豊かな子供に成長していくのです。

またキレイで美しいだけの話ではなく、死や戦争、人生のはかなさもテーマにあり、ストーリーに光と影があるのも良かったです。考えさせられるんだけども、かといって直接的ではなく、子供から大人まで観られる絶妙な距離感でした。

人生で大切にしたいと思うことを、アメリから学んだ気がします。

 

インタビューの感想

普段パンフレットを買うのも2年に1回くらいなのに思わず買っちゃいました。ビジュアルも素敵だし、インタビューに読み応えがあって買って大正解でした!これからの方はぜひ。

ネタバレしない程度に感想を残します。

監督お二人のインタビューを読み、驚くほどの細部へのこだわりや、世界観の作り込み、あの豊かな色彩表現の秘密、リサーチ、原作へのリスペクトがあって、そして日本とのつながりを感じさせる話も興味深かったです。

面白いのが、この作品はアメリー・ノートンの自伝を基にしているのに、本人はまったく制作に関わっていないそうです。

原作はもっと哲学的な一方、映画の重要なシーンのほとんどは原作の本にない創作だと知りました。

そしてインタビューに度々出てきていたのが、「翻訳」というワード。

私が勉強している、他言語から母語の文字→文字を訳す翻訳ではありません。

マイリス・ヴァラード監督の言葉を借りると、「アメリー・ノートンの文学的表現を視覚的表現に翻訳する」という、文字→映像の翻訳なのです。

よく映像翻訳の世界で言う「原作者の意図を伝える」という軸がまったく同じなんですね。そんな共通点も、私には印象的でした。

 

おすすめと私の気になるリスト

原作小説「チューブな形而上学(Métaphysique des tubes)(2000年)」
読んでいないのですが、読みたくなっています。というか、表紙…!可愛い!

 

監督お二人が関わった「ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん」
こちらは前から観ようと思っていたアニメーション作品。Amazon Primeでレンタルできます。

 

代表作「畏れ慄いて(Stupeur et tremblements)(1999年)」

こちらは原作を読みました。

大人になった彼女が日本に戻り、大企業に就職して苦労する自伝的小説です。あまりに酷すぎるパワハラのオンパレードで、脚色しているであろうとは言え「この人日本にがっかりしてこんな本出したのかな」と当時思っていましたし、日本人としては少し複雑な気持ちになりました。

フランスではベストセラーになりましたが、私の抱いた印象の通り、日本では批判が集まったとのことです(笑)

でも映画を観て、彼女が自分を「私は日本人だ」と言うのも、日本を愛していたのも、理解できた気がしました。実は今この「畏れ慄いて」映画版を観ていまして。また紹介したいと思います。

 

 


私は字幕版で観たのですが、声優陣もとても豪華!こんな素敵な映画をいつか字幕翻訳してみたいし、吹替翻訳もしてみたいです。

A bientôt !

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