「映画の翻訳」はキラキラしてない!泥臭い字幕作りのリアル

映画の字幕翻訳の厳しい現実を解説するアイキャッチ。華やかな映画のイメージと、泥臭いリサーチ作業の対比 思考ログ

Coucou ! ほたです。

映像翻訳家の養成コースを終えて思い知らされたことは山ほどありますが、1番は「外国語ができること」と「翻訳ができること」は、全くの別物だということです。

外国語はそれなりに独学ができるけど、この「外国語以外の部分」がとにかく難しかった。

しかしこの技術がないと、結局すぐAIに取って代わられるような翻訳しか出来ないのだと、気が付きました。映像翻訳家を目指すうえで、面白いことに、私は今AIをそれほど脅威に思っていません。

今日はこの最高に熱い世界を少しだけ紹介させてください。

 

映像翻訳ってなに?

文字通り映像を伴う素材の翻訳です。映画はもちろん、海外ドラマや情報番組、YouTubeなど色々ありますね。

あまりに制限が多く、「翻訳のために翻訳以外のことをしている時間が大半」というのが、最初のイメージと何よりも違ったことかもしれません。むしろ、様々な分析や調べ物の先にやっと翻訳があるという感じです。

大きく分けると「字幕翻訳」と「吹替翻訳」の2種類があります。皆さんは映画館で字幕と吹替、どちらで見ますか?

この2つの翻訳は全く手法が違っていて、また面白いんです。今日は興味がある人が多い字幕にフォーカスします。

 

字幕作り最大の壁

苦労するのは、なんといっても「厳しい字数制限」です。

人が画面を見ながら1秒間に読める文字数は限られています。どんなに深いセリフでも、画面の都合で「制限3文字」と言われれば、3文字に凝縮しなければなりません。取捨選択に、ものすごく判断力を求められます。

記号のルールも厳密に決まっていて、漢字さえ自由に使えるわけではないので、こうした新聞記者用の辞書で細かく調べます。

常用の漢字だと思っていたら平仮名にする必要があったり、日本語の方に手間取ったりします。

 

リサーチの狂気

次に、翻訳作業と同じか、それ以上に時間をかけるのが「リサーチ」です。

例えば「ウサギの体重は2キロ」と発言されていたとしても、それはどんな品種で、成体のことなのか、5キロの場合もあるんじゃないか、ここで言い切るのは妥当なのか、信頼できるソースで裏を取ります。動物の生態、歴史的な背景、地名や固有名詞の読み方ひとつ……。

もはや翻訳をしているのか、研究をしているのか分からなくなるほど、海外のサイトから図書館で司書さんに探してもらった本まで使い、事実確認をします。メディアなので、適当を言うのは許されません。

こうした作業を重ねに重ねます。

字幕づくりの技術的な話はもっともっと深いのですが、マニアックになりすぎるので今日はこのへんで控えます(笑)

 

泥臭くて熱い世界

かつて少し語学ができるようになった(と思っていた)頃の私は、映画の字幕を見て「原文と全然違う〜」と心でドヤ顔することもありました。

今それがどれだけ浅はかなことだったのか、とにかく反省しています(笑)

あれは翻訳者さんがあらゆる制限の中で、作品の意図をもっとも伝えられる言葉を絞り出した「最適解」であって、全文訳とは違うからです。

そのセリフの「核」を掴み、練りあげて自然な日本語に落とし込んだ言葉は、AIが出してくる表面的でお利口な訳文とは違う、心がある訳文です。

違う言語で表現されたことを、同じ温度や質感を保ったまま、日本語に再現して視聴者に伝える。

これほどまでに言葉を煮詰めて突き詰められる分野はあるでしょうか?

映像翻訳は、いざ勉強してみるとまったくキラキラした世界ではなかったです。ただ知れば知るほど最高に泥臭くて、熱いのです。

 

おすすめ

私が過去に使った映画字幕で学ぶフランス語の教材もあるので、この記事を読んで興味深いと思ってくださった方には、刺さるかもしれません。

フランス映画の字幕を題材にしたテキストは珍しく、しかも分厚くないので気軽に使えてオススメ。というか字幕に興味がなくても「シェルブールの雨傘」は本当に良いですよ。

過去にこの教材についてレビューもしています。

映画「シェルブールの雨傘」で学ぶフランス語【対訳シナリオ】
クラシック映画 Les Parapluies de Cherbourg 「シェルブールの雨傘」の紹介、「シェルブールの雨傘 - 仏和対訳シナリオ」のテキストを使い終えた感想、この映画で学べるフランス語について、劇中のセリフも交えて紹介します。

 

あとこんなのもあります。みんな大好きアメリの映画スクリプト集。

日本語版はなく注釈部分がドイツ語なのですが、スクリプトを文字で見られるのが最高に良いところ。ただし実際のセリフとは大幅に違います(笑)それすら面白いですけどね。

私もまだ途中なので、終えたらレビューしようと思います。

 

そして最後に、私の推し字幕も紹介させてください。こちらは英日です。

内容もさることながら、去年映画館で初めてちゃんと見て、なんて気持ちのいい字幕なんだろうと感動しました。映画館で見たのとアマゾンプライムはやや違う気もするんですが、肝心の好きな所は同じでした。※劇場用・配信/ソフト用では翻訳者が違うケースがままあります。

イライザのコックニー訛りが江戸っ子訛り。「大将 花 買っとくれよ」「よせやい」「もらい手がねえ」…だいぶ攻めていて好きです。

 

 


次は吹替のお話もしたいと思います。

A bientôt !

コメント

タイトルとURLをコピーしました